3月のひとこま

バレンタインも終わって、そろそろ3月になろうという頃に雄二は、何かいつもと違うことに気付いた。
なんだろう?いつもどおり、学校は行ってるし、バレンタインの成果は、今年も適当だったし…。
彼の考えは、いつも女の子に向いてるので、すぐには思いつかない。
 
「ん?あ、そうか、この時期に、姉貴がいるのにお雛様の飾り付けがないからだ。今年は、どうしたんだろう?」
 
ようやく、気が付いた雄二は、姉である環の部屋へと向かった。
コンコン。ノックをするとすぐに、どうぞという姉の声が聞こえた。
 
「雄二?何か用?」
 
環は、雄二のほうを見もせずに、勉強しながら返事をした。
そんな姉を見ながら、雄二は思っていたことを聞いてみた。
 
「なあ、姉貴、今年はなんでお雛様がでてねえんだ?家にいるときは、必ずお祝いしてただろ。」
 
「えっ?お雛様?あぁ、そうね、もう3月だもんね。
 はやいなあ、私がこっちへ来てから、もう一年にもなるのね…もう、卒業だしね。」
 
雄二の質問に答えるわけでもなく、つぶやく姉をみて、彼はいつもと違うことに気付いた。
と言っても、今日に始まったことではなく、最近の姉はいつもこんな感じだなと思っていた。
 
 
「姉貴、どうかしたのかよ?なんか、変だぜ。最近、何をやってても、うわの空って感じだな。」
 
「そ、そう?別に何も変じゃないわよ。
 あんたが急に3月なんて言うから、もう卒業で、みんなにも会えないんだなって思ったらちょっとね…。」
 
「貴明とまた、離れ離れになってしまうからか?」
 
「か、関係ないわ、タカ坊のことは。そ、それに、タカ坊には、久寿川さんがついているもの。」
 
「姉貴、弟の前で、無理すんなって。」
 
「な、なによ、あなたのほうこそ、久寿川さんには、相当お熱だったじゃないの。」
 
「ははは、まあ、俺は、いつもどの娘にも真剣だぜ。
 でも、今は、貴明とうまくやってくれればなぁって思ってる。
 やっぱ、好きだった人には幸せになって欲しいものな。」
 
「あんたは気楽でいいわね…ほんと。」
 
「そんなに、貴明のことが気になるなら、あんなに後押ししなきゃよかったんだよ。」
 
そう、環には、その言葉の意味はよく分ってる。
でも、彼女は、雄二と同じように、貴明が幸せになれるならと、
自分の事は棚に上げて彼のことを後押ししたのだった。
 
久寿川さんと付き合えるように…。
 
『どんな事にも真剣になれて、誰にでも平等、公平なのはタカ坊の美点だけど、そんなのウソくさいだけよ。』
『言っておくけど、タカ坊が考えているような女の子は、この世には一人もいないのよ。
 このみも…それに、あたしも、同じなんだから。』
 
あんなこと言うんじゃなかったと、今でも後悔している環ではあったが、
貴明が幸せならそれでいいかとも思っていた。
ただ、割り切れなかっただけだった。
 
「姉貴、貴明のことをあきらめて、新しい男を捜せなんて言わないけど、元気出してくれよ。
 姉貴らしくないぜ。それに、あの二人だって、どうなるかわからんぜ。」
 
「どういうこと?」
 
「ははは、あの貴明だぜ。1万キロ以上はなれたところにいる女の娘の気持ちを
 あやつれるような奴じゃないって事だよ。
 俺さ、本当はちょっと心配してんだよ。あの二人大丈夫かってな。」
 
「雄二…。」
 
「ま、俺は人のことを心配する前に、自分の相手を探さなきゃな。」
 
「そうよ、あんたは、ルックスはいいんだから、もう少し落ち着きなさいって。
 タカ坊とたして2で割ったらちょうどかしらね。」
 
「まあ、それはそれとして、姉貴がいなくなったら、ちょっと寂しくなるけど、元気出してくれや。」
 
「雄二…いつから私にそんな口をきけるようになったのかしら?」
 
「いててて、割れる、割れる…やめろ…なんだよ、ちょっと優しく言ってやったのに…えっ?うわっ。」
 
アイアンクローを環にお見舞いされた後、雄二は突然、環のほうに引き寄せられて、
顔を環の胸にうずめるようになってしまった。
 
「姉貴…な、なんだよ。」
 
「ありがとね。雄二。あなただけよ、そんなに気を使ってくれるのは。
 わかった、お姉ちゃん、明日から、ううん、今日からちゃんとやるわ。」
 
雄二は、彼女の胸の中で動けないでいたが、ふと、自分のほほに冷たいものが落ちてきたのを感じた。
  
(姉貴、泣いてるんだ…)
 
「あなたは、やさしい子だから、きっと素敵な娘がみつかるわ。」
 
「そ、そうだといいんだけどな…。」
 
抱擁から解放された雄二に、涙をぬぐった姉から命令が…
 
「そうと決まったら、お雛様出すわよ。さあ、蔵まで行ってすぐ用意しなさい。
 白酒買ってきなさい。終わったら、このみとタカ坊呼んできなさい。
 その間に私は料理作ってるから。あ、桃の花も忘れないようにね。それから…。」
 
「そんなに、一気にできないって。」
 
「なんですって…?
 いつから私に口答えできるようになったのかしら。
 あなた一人でできなかったら、タカ坊も呼んできなさい。わかった?」
 
「はい〜。では行ってまいります〜。」
 
「よろしい。」
 
まあ、いいわ、幼馴染っていう関係だけは壊さなかったから…壊せなかったのかな?
壊せば、タカ坊が手に入ったかもしれない。
でも、何もかもなくなってしまったかもしれない。
 
今回も、踏み出せなかったな…また、チャンスはあるのかな?
雄二はああ言ってたけど…まあ、それを支えにしばらくがんばってみるか。
今まで、待ったんだからね、またしばらく待ってるわ、タカ坊。
それまでは、ず〜っと、タマ姉だからね。
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あの…SSというより、SSSですショート・サイド・ストーリーです。ささらにタカ坊を奪われたタマ姉の気持ちって、どんなんだろうか?と想いながらかいてみました。でも、タマ姉、大丈夫ですよ、想い続けていれば、きっとむくわれるから…。ところで、これは、ひな祭り記念のつもりだったんですが…今日は何日だ…と。いちおう、30000Hit記念のつもりでもあります。今回初めて、3人称的な感じで書いてみました。む、難しい…。

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