帰郷
ひさしぶり…何年ぶりかしら… 私の髪をそよがせる風、春の景色、桜並木…帰ってきたわ。
何度か帰省していたけど…でも、やっぱり違うわね。
今回は、絶対に…大好きな、忘れられない彼をなんとかものにするために帰ってきたわ。
たった一年しかないけれど…この時を逃さないようにしないと…
私の大事な人…タカ坊。どんな感じになってるかな?
雄二は、『昔のまんまだぜ。相変わらず人がいいし…まあ、
その辺が女の子にもてる秘訣だろうけど…』って、気になることを言ってたけど。
そんなにたくさんガールフレンドがいるのかしら? そうね、彼ならもてても当然ね、なんたって私が見込んだ人だもの。
彼は弟の雄二と同い年で、私のひとつ年下。、幼なじみなんだけど…
なかなか、鈍感で…私の気持ちなんか全然気がつかないのね。
まあ、それは、誰に対しても同じだから、仕方ないけれど…
とにかく、明日からがんばろう。記念すべき第一日目ですもの……。
家に帰ると、雄二が私の荷物を運んでくれていた。あら、もう届いてたのね。
「姉貴、どこいってたんだよ。ずいぶん前に荷物が着いてたぜ。
でも、なんでこんなにあるんだよ。これだったら、たかあきを呼んどけば良かったぜ。」
「えっ?雄二、タカ坊に、私が帰ってきてることは言ってあるの?」
「えっ…あぁ。帰ってくるってことだけは言ってある。でも、同じ高校に行くとは言ってない。一応、寺女ということにしてる。」
「ふふ〜ん。よくできました。私が言うまで黙ってるのよ…もし、裏切ったら…わかってるわね。」
「わ、わかってるって、合気道2段のお姉さまのおっしゃることに逆らいません。」
「よろしい。」
雄二から受け取ったダンボールを、ひとつひとつ開けていくと、
私の城が少しずつ出来上がってゆくような気がする。
なんだか、とっても嬉しいんだけれど…早く終わって彼のところに行きたい。
どんな風に迎えてくれかしら…まあ、彼にとって、タマ姉はタマ姉なんだから…
期待はしてないけど…っていいながら結構期待してる私もいるわけよね…ふう〜。
「姉貴。今日はそのぐらいにして、後は明日にしたら。晩飯食おうぜ。
親父もお袋も待ってるぜ。」と雄二のお誘い。
そうね、今日はお父様もお母様もいらっしゃるんだから、みんなで食事しなきゃね。
「わかった。すぐ行くわ。」
手にした、アルバムを机の上において、私も家族のもとへ。
今日が始まりですものね。久しぶりのお父様のお相手も楽しいかしら?
あら?廊下までお父様の声が聞こえるわ…うふっ、上機嫌ね。
私が部屋に入ると、みんな、待ってましたとばかりに視線が私のほうに…。
「お待たせしました。向坂環、帰ってまいりました。」
「うん。お帰り、環。」
「おかえりなさい、たまきちゃん。」
「おかえり、姉貴。」
家族みんなで食卓につく。久しぶりに家族が揃っての夕食、お父様も上機嫌ね。
お酒も進んでるわね〜。お母様も今日だけは大目に見ましょうという顔をしてニコニコしちゃって。
やっぱり家族っていいわねぇ…私も、彼と一緒になって家族で…なんてね。
「姉貴、なに赤い顔してんだよ。酒がまわったのか?」
えっ?お酒なんて飲んでないわよ。
そ、そうか、きゃ、いろんなこと考えてたから…はずかしい…
結局、その晩は、夜遅くまでお父様のお相手をして、お酒もちょっぴり…
寝たのは夜中になったんだと思う…が、全然覚えていない。
んっと、少し頭が重いわ…二日酔いかしら?そんなに飲んだのかしら…時計を見ると、
「え〜っ!もう11時じゃない!」
大慌てで、顔を洗ってたら、後ろから雄二の声。
「姉貴。さすがに疲れが出たのかよ?よく寝てたなあ…って、
まあ、夜中の3時まで騒いでたら、そりゃ起きれんわな。」
「えっ?そんな遅くまで起きてたの?」
「あれ〜?覚えてないの?途中から『にゃーにゃー』絡んできてうるさかったんだから。
挙句の果てに、そこで寝てしまうもんだから、親父と二人で運ぶの大変だったんだから。」
「…えっ…」
(そう言われれば、なんとなく記憶が)
「ねえ、私何か変なこと言ってなかった?」
雄二は変に、にやにやしながら、 「ふ〜ん。覚えてないんだ?」
「えっ、何?」
「『お父様、私、向坂環は、絶対に、こうのたかあきさんと一緒になります』って。」
え〜、本当にそんなこと言っちゃったの?顔が火照っているわ。
今、真っ赤になってるんじゃないかしら…
「………うそっ」
「うそは言わねえ。」
穴があったら入りたいって、このことね。
「…それで…、お、お父様はなんておっしゃってた?」
「うん?いや別に、ニコニコして聞いてたよ。んで、
『お前が好きならそうしなさい』って、言ってたな。」
そうか…お父様…
「雄二。このことは誰にも言っちゃだめよ。わかってる?」
「へいへい。わかってますよ。」
ああ、恥ずかしい。最悪…。醜態をさらしちゃった訳ね。
家族の前だから、ちょっとお茶目しちゃったかな?
おばあ様がおられたら、大変だったわね。 今頃、廊下で正座+お説教と言うところだったわね。
それに、今日は、早く部屋の片づけを終わって彼のところに行こうと思ってたのになぁ…
まあ、しかたないか。私が悪いんだし…がんばってやろうっと。
そうだ!災い転じて福となす。うん、明日は土曜日だし、
タカ坊はどうせ朝寝坊してるだろうから、寝込みを襲いに行こう…。
な〜んて考えながら、結局、片づけが終わったのは夕方になっちゃった。
まだ、雑然とした感じはあるけど、まあ、少しずつ良くなるでしょと適当に決めて終わりにした。
今日は早く寝ようっと…明日早く起きて…おめかしして…
朝ごはんも作って行こうかしら?サンドイッチでいいわよね。
タマ姉お手製の本格料理はまた別の日にしてっと…おやすみなさい…タカ坊…
翌朝、早くに、家をでて、タカ坊の家へ。って、そんなに早くはないけれど、
たぶんタカ坊にとっては早朝よねこの時間は…うふっ。
なつかしいな、この辺あまり変ってないわ。これが、このみの家で、あれがタカ坊の家ね。
(このみの家にはあとで寄ろう。買い物に行くときにでも…)
きょろきょろしながらタカ坊の家までたどり着くと、呼び鈴を…
ちょっとまてよ、うん、そうだ、ひょっとして、
まだ、鍵置き場は変わってなかったりして…
玄関側の植木鉢の下をみると、やっぱりあった。無用心ね。
鍵を開けると、音を立てないように…ネコ歩きで…ふふっ。
彼の部屋の扉をゆっくりと開けると、いたいた。
予想通り、まだ寝ていた。でも、もう9時だよ、そろそろおきなきゃね。
「タカ坊。朝ですよ。起きなさい。」
「…」
「タカ坊、起きなさい。」
「…ん…」
「タカ坊。起きないと、知らないよ…」
「…」
あらら、向こうに向いちゃった。
じゃあ、実力行使ね。寝ているタカ坊をぎゅ〜と抱きしめて…
「タカ坊…お・き・な・さ〜い」
「ぎゃ〜誰だよ、やめろって…えっ?何?誰?痛いよ、離して…
って…この感じは、ま、まさか、まさか…タ、タマ姉?」
「そ〜よ。起きた?」
「起きた、起きた。起きたから離してって。」
「だめ、久しぶりなんだから、この抱き心地を味あわせて…
何年分も溜まってるんだからね。」
ぎゅ〜、ぎゅ〜っと。
「タマ姉、痛いって、もうやめてよ」
「いや〜。やめない。もっと〜」これって知らない第三者が聞いたらへんな想像されたりして…
「タ、タマ姉…お、おねがいだから、離して…く、苦しい…」
ん?じゃあ仕方ないわね。また今度ゆっくりと味あうか…
っていうことで、開放されたタカ坊は、
「あ〜苦しかった。久しぶりのタマ姉の抱擁はきついよ。ところで、なんでここにいるの。」
「あれっ?雄二から帰ってることを聞いてなかった?」
「ううん。帰ってくるのは知ってたよ。でも、ここ、僕ん家だよ。なんで、タマ姉がいるの?」
「う〜ん。あのね、無用心よ。置き場所変えておきなさい。」
私は、鍵をひらひらさせてみせた。
「…もう、油断もすきもないんだから…って、それ犯罪だよ…タマ姉。」
「もう〜、ぐだぐだ言わないの。タマ姉特性のサンドイッチ持ってきたから朝食にしましょう。
さあさあ、着替えて、着替えて。」
タカ坊は、しばらくこっちを見ながら、予想どおりの台詞を。
「タマ姉、着替えるんだから、でてってよ。」
「なんで?」
「だって、恥ずかしいじゃないか!」
「何を恥ずかしがってるのよ。昔はよく一緒にお風呂に入ってたじゃない。」
…って、昔と違うから恥ずかしいのよね。うふふ。
ん〜どうしようかな〜。あっ、そうだ、いいこと思いついちゃった。
「タカ坊、出てってほしい?じゃあ、ひとつだけ言うこと聞きなさい」
「な、何?」
そんなにびくびくしないの。酷いことを、このタマお姉ちゃんがするわけないでしょ。
「あのね、向こう向いて、パジャマの上だけ脱いで。このぐらいだったらいいでしょ。」
「うん、わかった。」
私の目の前で、パジャマの上だけ脱いで、背中をこちらにむけて、
「これでいい?はやく出てってよ。」
私は、そ〜っと近づいて、後ろから、ぎゅ〜と抱きついちゃった。
いつもみたいに、力任せにじゃなく、ゆっくりと、包み込むように。
ん〜タカ坊のにおいがするわ、昔と変ってないかな?
知らない間に背中が広くなったわね。ず〜っと、このままでいたい…
けど、う〜ん、やっぱり我慢できない。タカ坊を抱きかかえたまま、ベッドへダイブ。
「タマ姉、痛いよ。やめてよ。それにそんなことしたら、着替えられないじゃないか。」
タカ坊の上に覆いかぶさってタカ坊をいっぱい感じて、いっぱい、すりすりして…
いつもと、少し違うことにタカ坊も感じたのかな?
「タ、タマ姉…ど、どうしたの?」
「ううん、なんでもないわ。タカ坊、ただいま。」
「うん。お、おかえりなさい。タマ姉。」
「もう少し、このままでいさせて、お・ね・が・い。」
今日が第一日目ですよ、未来の私のだんなさま。