変化の術   

noritama

 変化の術が解けなくなった法子に抱かれて俺は村まで帰った。

道々、どうしたらこいつの術が解けるか考えていたが、
俺程度の術者ではやはり無理だな…というのが結論だった。
誰かに助けてもらわないとなぁ…
 
 
確か、こいつの長姉は、一族の中でも特別な術者だから出来るかもしれないか。
 
「なあ、やっぱり、お前の姉ちゃんに頼もうか? 
お前の姉ちゃんならなんとかしてくれそうな気がするんだが…」
 
「えっ?何のこと?」
 
「何のことって、お前、変化の術のことだよ。
  解けなくなったんだろう? 
  解けなくてもいいのか?」
 
「あぁ、そのこと? 別にこのままでもかまわないわ。
 もともと、人間の姿って好きだから。」
 
こっ…こいつ…人が、じゃなかった、狐が一生懸命考えてやってたのに…
なんでこんなに脳天気なんだよ!
 
「でもよ、まあ、そのままでもいいけど…
 やっぱ、戻り方は会得すべきだと思うけど…色々と困るぜ」
 
「う…ん。そうかな…玉ちゃんが言うなら、そうかもね。
 でもどうしたらいいんだろ?」
 
「だからお前の姉ちゃんに相談しようや」
 
「大きい姉ちゃん?」
 
「そう、お前の一族、いや、俺たちの一族では長老より強い術者だろ?」
 
「うん、わかった。行ってみよ。」
 
こいつの長姉は、村はずれの丘のふもとに住んでいるらしい…
って、俺たち狐族は誰がどこに住んでいるのかはあまりよく知らない。
突然、住処を変えたりするからだ。
知ってるのは親戚一族ぐらいかな? 
あと、長老と呼ばれる村の長には連絡しておかなきゃならないんで、
長老はみんな知ってるけど…。
 
「ここか?」
 
「うん。
 この間教えてもらったときは、ここだったよ。
 お姉ちゃ〜ん、いる〜? 法子だよ〜」
 
すると、俺たちの前の大木の幹に突然入り口が現れた。
 
おぉ…と驚いていると、中からこいつの長姉が姿を現した。
さ、さすが…一族有数の術者だけある
 
 
じゃあ、なんで、こいつはこんなに出来が悪いんだろう
 
 
まあ、そこが可愛くもあるんだが…。
 
「どうしたの法子? 
 久しぶりね。元気だった? 
その人間の姿可愛いわね。
変化の術? 上手になったじゃない」
 
「えへへ…そう?
 実は、私も気に入ってるんだ。
 玉ちゃんも可愛いって言ってくれたし…」
 
満面の笑みで返事してやがる。
はぁ、ほんと…気は抜けるぜ…全然、切迫感がないんだから…。
 
「でも、そのままじゃ話しにくいから術を解きなさいよ」
 
「それが〜、あの…出来なくなっちゃって…
 お姉ちゃんに助けてもらおうと思って来たの」
 
「えっ? 変化の術が解けないの? どうして?」
 
そこで、こいつの長姉に、今までのいきさつを説明した。
ふんふんと聞きながら、2、3質問した後、
ああそうかという顔を見て俺はちょっと安心した。
何か方法がありそうだな。
 
「変化の術って自分で解かなきゃだめなの…私も手伝えないわ。
でも、そんなに難しいはずは無いの。
逆にね、術をかけるときには、どう思ってかけたの?」
 
「えっ? 恩返しに行くときに可愛く見てもらおうと思って、
 精一杯イメージを浮かべながら、こうやって、くるっと回ったの。」
 
「そうよね。
 別にね、回るのは一種のパフォーマンスだからどうでもいいのよ。
問題は、どういう風にイメージするかよ。
だから、あなたが戻れない原因はそこにあるの。
たぶん戻りたくないという気持ちも少しあって、
それに、誰に戻った姿を見せたいかというイメージに欠けてるのよ。
わかる?」
 
「イメージ…?」
 
「そう、たとえば、好きな人に自分の元の姿を見てもらいたいとか…そういう気持ちね。
ね、玉五郎。あんたも、法子の元の姿が見たいだろ?」
 
「えっ? まあ、そうかな…別に俺はどうでもい…」
 
と言いかけたら、姉さんに思いっきりけられてしまった。
 
「い、いてて…
 あ、はい、はい、やっぱり法子は、もとの姿のほうがいいです。」
 
「よろしい。
 ね、法子。
 みんなが戻って欲しいんだと思いながら術を解いてごらん?」
 
「う…ん。やってみる」
 
法子は目をつぶって、しばらく瞑想に耽っていたが、
いきなりスケート選手よろしくくるっと回った。
でも、元に戻らない。やはりだめなのか?
 
「法子。
 かなり波動は、感じるようになっているわよ。
 もう一息よ。
 ほら玉五郎も応援する」
 
いてっ? 蹴るなよな。
本当に、法子の荒っぽいのはこいつらの一族の遺伝だな。
 
「法子、がんばれ、俺がついてるぜ」
って、ちょっと恥ずかしかったな、今のは。
 
法子は、うんと頷くと、もう一度、瞑想に入った。
確かに徐々に波動が高まっているのは俺にもわかる。
意を決してくるっと回ると、
そこにはもう今までの姿はなく、狐にもどった法子がいた。
 
「お姉ちゃん。もどれたよ」とはしゃぎながら、
その辺を走り回るこいつも可愛いなと思いながら、
とりあえず、ほっと胸をなでおろした。
 
「うん。よかったね、法子。これで、変化の術はもう大丈夫ね。
でもね…変化の術程度ならいいけど、あんまり難しい術は練習しちゃダメよ」
 
「えっ? どうして?」
 
「うん? どうしてって…どうしてもよ。う〜ん。
そ、そう…難しい術だとおねえちゃんが手伝えないかもしれないでしょ?
それとも、お姉ちゃんの言うことが聞けない?」
 
「う…ん。わかった」
 
なんでだろ?
普通、術の練習を止めるやつはいないのに…何かあるのかな?
 
「わかれば、よろしい。
 じゃあ、玉五郎、法子のことを頼むわよ。」
 
「えっ?…は、はい。分かりました」
 
頼むわよって、言われてもなぁ…
でも、たぶん、ここで反抗すると、
ひどい目にあうことは間違いないから、
今日のところはおとなしく引き下がっていよう。
 
「お姉ちゃん、ありがとう」
 
「どうもありがとうございました」
 
俺たちの言葉に、少しだけ微笑を残して、こいつの姉ちゃんは消えていった。
本当にすごい術者だな。
なんで、こいつはこんなに出来が悪いんだろうと思ってしげしげと眺めていた。
 
「玉ちゃん。今、何か失礼なこと考えてるでしょう」
 
「えっ? いや別に…」
 
 
 
相変わらず勘だけは鋭い。
 
「まあ、とりあず、元に戻れたし、よかったじゃないか」
 
「うん、そうだね。じゃあ帰ろうか」
 
「ああ、そうだな」
 
俺たちは帰路についた。
俺の家とこいつの家は
途中の分かれ道で逆方向になるから、そこで別れの挨拶をした。
まあ、今日は楽しかったな、色々あったが…。
 
次の日、俺の家にあいつがやってきた。
 
「お、お前、また、変化の術を使ったのか? 
 大丈夫か? 戻れるのか?」
 
法子は、また、人間の姿になっていた。
昨日よりはちょっと幼い感じにはなっていたが、
間違いなく昨日と同じ人間の姿だった。
 
「うん。
 戻り方も分かったし、昨日、家で随分、練習もしたんだ。
 もう大丈夫だよ。
いつでも元に戻れるようになったよ。
でも、この姿がやっぱり好きだから…
このままいようかな…って思って…どうかな? 玉ちゃん?」
 
どうかなって…反則なぐらい可愛いぜ。
本当に…それじゃあ俺も…得意の幻術を使って俺も人間の姿になった。
 
「これが返事だ。お前といっしょにいてやるよ」
 
「わあ、上手ね。かわいい。
 じゃあ、わたしの弟ということにしてあげる」
 
「お・と・う・と?」
 
「うん、だって玉ちゃんって私よりかなり年下だもん。」
 
まあ、確かに言ってることは正しいけど…
おまえ、術へたくそじゃん。
姉ちゃんならもうすこし姉ちゃんらしくして欲しいもんだな…
って、まあ、しゃあねぇか。
 
「わかったよ。
 じゃあ、早く俺より上手に術が使えるようになってくれよな、
 バカお姉ちゃん。」
 
「あ〜、またバカって言った〜。
 バカって言うほうがバカなんだからね。」
 
本当にバカなんだから…
いつか、俺の気持ちを分かってくれるまでは、
幼馴染の弟でいてやるよ。
気分的にはおまえのほうが妹なんだけどな…
 
「ねえ、今、なんか失礼なこと考えてない?」

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 第4話をうpしたついでにリニューアルしました。内容は変わってませんが、見やすくしたつもりです。このお話は、法子の作者の方が新しい法子のイラストを書かれて、それが、少し幼かった(炉利)ので、その辺を考慮しながら書きました。 

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