タマ姉 アメリカへ

…あ、うん? 眠い…何時だろ? え〜と、あ、もう朝ね。そろそろ、起きて支度しなきゃ。
私は、眠い目をこすりながら、ポーチを持って化粧室へと向かった。
中に入ると眠そうな私が鏡に映っている。
タカ坊にこんな顔を見せられないわ、さあ、がんばって身だしなみを整えましょう。
顔を洗って、歯を磨いて、薄っすらとお化粧もして、髪を梳いて、これでよしっと。
 
私は、今、飛行機の中。そう…アメリカにいる大好きなタカ坊に会いに行くために…。
 
本当は、この8月には、帰ってくる予定だったんだけど…
どうやら、向こうの教授に気に入られたらしくて、あと3ヶ月のびそうだって言うんで、
もう、いても立ってもいられなくなって、お盆休みを利用して飛んできちゃった。
 
あと2時間ぐらいで彼に会えると思うと、なんだか、ドキドキして。
これ、最近忘れていた感覚かもしれない…
昔…出逢った時も、九条院から帰ってきたときも、そして、告白されたときもこんなどきどきだったような気がする。
 
飛行機は、サンフランシスコの上空を旋回しながら、空港へと降りていった。
目をつぶってタカ坊の事を考えていたら、軽い衝撃があって着陸したのがわかった。
飛行機から降りて、荷物をピックアップすると出口へと急いだ。
この向こうでタカ坊が待ってるはず…そう思うと自然と足が早くなる。
 
自動ドアが開くとたくさんの人がそこにはいた。
タカ坊は? タカ坊は…えーと。あ、いた、そう思うのと同時に彼も私を見つけてくれた。
 
「タマ姉!」
 
タカ坊が大きく手を振って、こっちを見てる。
私も、大きく手を振って、カートを押しながら彼の元へと向かった。
 
「タカ坊〜、会いたかった〜」
 
私は、タカ坊のところに行くと、ぎゅ〜、ぎゅ〜と抱きついた。
 
「ああ、いいわ、これよこれ、この感触よ、タカ坊〜」
 
「タ、タ、タマ姉、く、苦しいよ。もう少し手加減してよ」
 
「だめ、何か月分たまってると思ってるの?」
 
「死…死ぬ…」
 
「そんな程度では死にません!」
 
「ほ、本当に…死ぬって…む…胸で息が…息が…」
 
しかたないわね、じゃあ、このへんで開放してあげるか…
私は、タカ坊に抱きついている手を緩めると、改めて『タカ坊、来たわよ』と耳元で囁いた。
『い…いらっしゃい…タマ姉…』と小さくつぶやくタカ坊の声が聞こえた。
 
タカ坊は、私から離れるとカートを押しながら、車のところまで案内してくれた。
結構大きな車なんだ…やっぱりアメリカの車って大きいのかしら。
 
「タマ姉、すごい荷物だね…」
 
「当たり前でしょ、女の娘が一週間も生活するんだから、このぐらいは必要よ。
 ところで、この車、タカ坊の?」
 
「違うよ、一応、免許は取ったし、小さな車も買ったんだけど、
 たぶんタマ姉の荷物は、入らないと思って、レンタカーで借りてきたんだ」
 
「あ…ごめんね、余計な心配させて…って、でも、そうしてもらわないと、
 途方に暮れるぐらいの荷物を持ってきちゃった訳ね。うふふ」
 
「じゃあいこうか」の声を機に、私は車に乗り込んだ。
『さて、どちらに参りましょうか?』というタカ坊を不思議そうな顔をして見つめていた。
どうやら、サンフランシスコにでも観光に行こうかということだったようね。
ま、そりゃ、アメリカに来るのは私も初めてだし、タカ坊と行くならどこでも楽しいけれど…今は…ね。
 
「タカ坊、どこにも行きたくない。タカ坊の住んでるところに行きたい」
 
「そう? いいの? 初めてでしょ? ゴールデンゲートブリッジでも見に行かない?」
 
「いいの、いいから、アパートまで行きなさいったら、行きなさい。それとも、素直にいけないわけでもあるの?」
 
「いえ、そんなことはありません。じゃあ、行くよ、タマ姉」
 
フリーウェイをしばらく走って、大きな橋を渡ると目の前にビル群が見えてきた。
そこから、少し走ったところに彼のアパートはあった。
最低限の荷物をもって、彼の部屋へ。
彼の部屋は、3階で、なんと、エレベータがないの。
こりゃ、あの荷物を全部運ぶのはたいへんね…なんて思いながら、彼の部屋に入った。
 
部屋は、意外ときれいに片付いていて、いつも、ビデオチャットで見ている景色がそこにはあった。
テーブルがひとつ、ソファ兼ベッドがひとつ、そして机がひとつ。 
 
机の上には、私の写真。壁にも、私達が日本で取った写真が何枚も飾ってあった。
うれしくて、なんだか、涙が出そうになって、誤魔化そうと、ベランダのほうに出た。
 
「うわぁ…見晴らしが良いんだ、素敵ね、タカ坊。空もきれいね、抜けるような青空って、これを言うのね。
 ねぇ、タカ坊、こんなに天気が良かったら、勉強する気しないんじゃない? ちゃんとやってる?」
 
「うん、やってるよ。それに、研究室に入ってしまったら、外の世界のことは分からないからね…ははは」
 
「…そう、ちゃんとやってるんだ…えらいね。ねぇ、タカ坊、こっち来て」
 
その声に応じてタカ坊も部屋からでて、ベランダのほうへ来てくれた。
私は、『来ちゃったよタカ坊』と言って、タカ坊の方に向き直った。
タカ坊は、私のそばまで来ると、さっきも言ってたよだって…何回でも言いたいのよ。
 
「タカ坊…キスして」
 
「タ…タマ姉! こ…こで? 見えるよ」
 
「アメリカじゃ、人前でみんなキスしてるんでしょ、だ・か・ら」
 
タカ坊は、覚悟を決めて、私に近づいてくる。
タカ坊の唇が、そっと私に触れる。
離れようとするタカ坊をぎゅっと抱いて、その唇は離さない。
息が出来なくなったって構わない…絶対離さない。
何ヶ月ぶりかの、タカ坊とのキス…付き合い始めた時も、ドキドキしたけど、こんなにドキドキするキスって、何年ぶりかしら?
 
「タカ坊…愛してる」
 
「僕もだよ、タマ姉…」
 
「寂しかった?」
 
「う…ん、正直ちょっとね」
 
「そ…う、ちょっと? ちょっと…なの? じゃあ、私も…ちょっとね」
 
なによ! 私を置いて一人で行っちゃったくせに。ちょっと寂しいってどう言うことよ! 
そんなときは、タマ姉がいなくてとっても寂しかったって言うのよ…本当に…。
 
「あの〜、タマ姉なんか怒ってる?」
 
「お、怒ってなんか無いわよ〜」
 
「いえ、なんだか、変にニコニコしてて、ちょっと怖いんですけど…」
 
「怒ってないって言ってるんだから、怒ってないの。タカ坊、荷物全部取ってらっしゃい!」
 
「え〜、あれ全部〜? 一人で? 無理だよ〜」
 
「うるさい! うるさい! うるさい! これ以上怒らせたくないなら、早く行きなさい」
 
「…やっぱ、怒ってる」
 
最後の荷物を持ってきたタカ坊は、部屋のドアを閉めると、疲れた〜とその場に座り込んでしまった。
 
「タカ坊、ありがと」
 
「タマ姉〜。まだ、怒ってる?」
 
「ううん、全然。ねぇ、タカ坊、お買い物行きたい。
 さっき、冷蔵庫の中見たら何もないんだけど、いったい何食べてるの普段…」
 
「いや、学校の食堂とか…カップラーメンとか…」
 
「私がここにいる間は、ちゃんと食事を作るから、買い物連れて行って。
 できたら、日本の食料品を売ってるようなところがいいな。そんなとこある?」
 
「うん、ちょっと、離れたところだけどあるよ。でも今から行くと帰ってくるのが夕方になっちゃうよ。」
 
「いいから、行こ」
 
結局、二人で、両手に持ちきれないほど食料品を買い込んだ私達は、
部屋までふうふう言いながら、戻ってきた。
買ってきた食料品を冷蔵庫にいれるとさっそく、今日の晩御飯の支度にかかった。
 
「ねぇ、タカ坊。今日は、私、ワイン飲みたいから、洋風でいい? あしたから、ちゃんと和風にするから」
 
「いいよ、構わないよ。タマ姉の作る料理は何でもおいしいから」
 
…だって、きゃ。よう〜し、腕によりを掛けて作っちゃお! 
 
 
さあ、出来たわよ〜。う〜ん、いい香り。
 
「タカ坊〜、さっき買ってきたワインあけて。それから、ワイングラスどこにあるの?」
 
「了解。ワイングラスは、上の棚だよ」
 
ワイングラスを用意して、料理の並んだテーブルに置くと、タカ坊が、ソムリエ風にワインを注いでくれた。
乾杯! 二人のワイングラスが音を立てた。澄んだきれいな音が。
 
「ワインおいしいね、タカ坊」
 
「うん、やっぱ、いいワインは違うね。高かったし。」
 
「違うわよ、タカ坊と飲んでるから…さあ、料理を食べましょ。
 腕を振るったんだから」
 
「うん、やっぱり、タマ姉の料理はおいしいね。
 あんまり、おいしいから、ワインがかすんじゃうよ」
 
「そう…うふふ(うれしい…)…でも、たまには自分で料理しなさいよ。
 外食ばかりじゃ、体に悪いんだから」
 
「うん、分かってるよ…」
 
「分かってない。どれだけ、私が心配してるか分かってない。
毎日、毎日心配なんだから…」
 
「タマ姉…大丈夫だよ。食事も学食だけど、ちゃんと食べてるし、栄養のバランスも考えてるんだよ。
 でも、やっぱり、誰かと食事するっていいよね。一人は寂しいから…」
 
「そう…? だからって、タマお姉ちゃんのとは違う、長い髪の女の娘と一緒に食事しちゃダメよ」
 
「そ、そんなことしないよ。ここに入る女の人はタマ姉だけだよ」
 
そんな事聞かなくても分かってる。
タカ坊が浮気なんかするはずがない。
でも、心配だから、つい口に出しちゃう…
 
実験で忙しい中、毎日のようにチャットしてくれるし…時差があるから、早起きして…
大好きな、タカ坊…って、なんだか、ちょっと眠い。
 
「…タ、タマ姉、あの〜、さっきから、飲むペース速くない?」
 
え? タカ坊にそういわれて、ボトルをみると、もうほとんど空になってるし、なんか、私一人で飲んだみたいな気もする。そういえば、さっきから、なんだか気持ちがよくって、ふわふわしてる感じ。
 
「ふにゃ〜、タカ坊〜、もう一本開けるのにゃ〜」
 
「だめだよ、タマ姉、飲みすぎ」
 
「タカ坊〜、タマお姉ちゃんの言う事が聞けにゃいかにゃにゃ?」
 
「わかったよ、少しだけだよ」
 
タカ坊が、ワインを取りにいってるすきに、本棚ちぇ〜っく。
たぶん、このあたりに、隠してると思うんだけど…
タカ坊の過去の隠し場所から考えて、大きな本の裏側に…と、あった、あった。
わ〜いやらしぃ〜
 
「タカ坊! これな〜んだ!」
 
「あっ、タマ姉! だめだめ、見ちゃダメ」
 
「うふ〜、もう遅いのですわ、見ちゃいましたわん! 
 タカ坊って、バニーちゃんがいいんだ〜えっち」
 
「タマ姉、返してよ、お願いだから」
 
「お願い〜? じゃあね、じゃあね、
 『バニーちゃんより、タマ姉のほうが可愛い』って言ってくれたら返してあげるわん。
 言ってくれなかったら…この事実を、日本に帰ってみんなにバラしちゃう。
 きゃははは、どっちがいいのかにゃ〜タカ坊は〜」
 
「わ、わかったよ、タマ姉。
 バニーちゃんより、タマ姉のほうが断然可愛い。これで、いいんだろ」
 
「可愛い? ねえ、私可愛い? そうか〜可愛いのか〜。じゃあ、タカ坊、お得だよね。タカ坊、大好き」
 
と言いながら、タカ坊をイスから引きずりおろして、ソファベッドまで連れて行って、
ぎゅ〜ってしたとこまでは覚えてるんだけど、そこから何をしていたのか全然覚えてないの。
 
目が覚めたら、タカ坊と一緒に、寝てたの。
パジャマに着替えてたから、タカ坊が着替えさせてくれたのかな?
そうだ、タカ坊、今日は学校行かなくていいのかな?
 
「タカ坊、タカ坊、起きて。学校行かなくていいの?」
 
「ふぁぁ…タマ姉おはよう、よく眠れた?」
 
「タカ坊、学校は?」
 
「3日間お休み。もうちょっと寝させて…昨日は大変だったんだから…タマ姉」
 
そ、そうなんだ…大変だったんだ…私…何したんだろう?
たぶん、あのまま、タカ坊を抱き枕にして寝たんだとは思うんだけど…
あ、そうか、って言う事は、タカ坊は…大変だったんだ…
 
ごめんね、タカ坊、あんなに騒いだのは久しぶり。
タカ坊と二人っきりだからつい嬉しくなっちゃって…しかも、家に帰らなくてもいいし…。
 
じゃあ、もうすこし、お休みなさい。
私は、タカ坊にキスをすると、シャワーを浴びにバスルームへと。
今日は、もう、あんな大騒ぎはしないから、安心してね。
 
でも、本当、二人っきりってとっても素敵ね。
これって、ハネムーンみたいね。
 
 
ん? ハネムーン? …て、て、いうことは、いうことは…
ひょ、ひょっとして、タカ坊、あんなことや、こんなことを期待してるのかな?
ど、どうしよう…全然考えてなかった…心の準備がまだ…
あぁ、どうしよう、急にドキドキしてきちゃった。
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しばらくうpしてませんでした。どうもすみません。留学中のタカ坊のところに行ってるタマ姉をちょっとドタバタ風に、ちょっとシリアスに、ちょっとラブラブに書いてみようと思ってます。たぶん、3話ぐらいになると思います。第一話は、到着して嬉しさのあまり、ちょっと脱線するタマ姉を書いてみました。自分で、ハネムーンみたいという言葉を使って、その意味にドキドキするタマ姉でした。2話では、そのへんももう少し…でも、18禁にはしないつもりですから、えちぃ表現はないと思います…かな?

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