タカ坊との出会い
その子を見つけたのは、ぽかぽかと暖かい春の日だったと思う。
いつものように雄二を連れて、公園まで遊びに行ったときに、私はみつけた。
お母さんらしき人のそばで、小さな女の子と一緒に、砂場で遊んでいる男の子。
普通なら、すぐに走り寄って行って友達になるんだけど、この時は、この私が気後れして行けなかった。
なぜだろう?私にも覚えは無い。
でも、そのときは、まあ、いいや、どうせそのうち一人で来るだろうから、
そしたら、私の子分にしちゃおうぐらいな、軽い気持ちだった。
そう、その子との出会いは、特別なことは無く、子分が増えそうだとの感触だけだった。
でも、そんなことがあってからは、その公園に遊びに行くたびに、少しワクワクしながら彼らを探していた。
そんなある日、念願の二人を見つけた私は、早速彼らの元へと走った…もちろん、雄二も従えて。
私たちが近づいて行く足音は、楽しそうに遊んでいる二人の耳には、入ってないみたいだった。
「ねぇ、あんた。どっからきたの?なんて名前?」
突然のその声に振り返った男の子。
前に見かけたときは、遠目に見ていたので、はっきりと顔を見ていなかったけれど、まれに見る可愛い子だった。
でも、それより、私を驚かせたのは、彼の綺麗な瞳。
その、真っ直ぐに私を見つめる瞳は、あまりにも眩しすぎて、思わず目をそらしてしまった。
彼は立ち上がり、こちらに向き直ると、私の質問に答え始めた。
女の子の方は、私たちの勢いに押されて、彼の後ろに隠れてしまった。
今、気がついたけど、この子小さいわね…かわいい。お人形さんみたいだ
「ぼく、こうの たかあき。あっちのほうに引っ越してきたんだ。」
彼が指差した方角は、新しい家が立ち並ぶ、いわゆる新興住宅地だった。
「ふ〜ん?その子は、あんたの妹?」
「うん。となりに住んでる、このみちゃん。」
「ん?じゃあ、妹じゃないんじゃない。」
「ううん、妹だよ。ねえ、このみちゃん。」
彼の後ろで、うなずく女の子。
よくわからないけど、まあ、いいわ。
「あたし、こうさか たまき。これは、弟のゆうじ。ところで、あんた、いくつ?」
「えっ?ぼくは、いつつ。このみはよっつだよ。」
「あたしは6さい。じゃあ、あんたは、ゆうじとおんなじね。」
「そうか、じゃあ、これから、なかよくしようね。」
そう言った彼の瞳の美しさに圧倒されて、子分にすることも忘れて、『うん』と返事してしまった。
でも、ちょっとは貫禄つけなきゃと知恵を振り絞ってこう言った。
「じゃあ、あんたは…え〜と、そう、タカ坊にする。あんたのことは、タカ坊ってよぶよ。」
「タカ坊?いいよ。じゃあ…タマキ姉…タマ…タマ姉。タマ姉でいい?」
タマ姉?えぇぇぇ?そんなの初めて言われたよぉ〜とは思ったものの、やっぱり、ここは平然としてなきゃ、お姉さんとしての威厳があるものね…。
「いいわよ、じゃあ、そうするわ。今日から、あたしたち仲間だから、だれかが困ってたら、ぜったい助けること。いいわよね。」
「うん。いいよ。このみもいいよね。」
と言われ、後ろで無言でうなずく女の子。この子、本当に可愛いわよね。前から、妹欲しかったんだ…。
その日は、鬼ごっこやかくれんぼをして、彼が『そろそろ帰る』というまで、思いっきり楽しんだ。
なんだろう?この子と遊ぶと、とっても楽しい。全然、いつもと違うのはなんでだろう?
初めて話をして、まだ、たった一日しか過ごしてないのに、私にとって彼の存在は、だんだん大きくなってきていた。
もちろん、幼い私が、そんなことに気がつくはずも無く、でも、とってもいい友達ができたという気持ちだけだった。
「じゃあ、タカ坊、このみ、バイバイ。またね。」
「うん、タマ姉、バイバイ、ゆうじも。」
私は、なんだか久しぶりに、ふっくらとした気持ちで家路にむかった。
いままで、感じたことが無かったこの気持ちに酔いしれながら雄二と家に向かった。
それが初恋だとも知らずに…。
それからの、私にとって、その公園に行って、彼らを探すことが、日課になっていた。
ある日、私が一人でその公園に行ったときの事。
「やめてよう。やだ、やだ。」
ん?これはこのみの声。タカ坊とけんかでもしてるのかな?
公園に入って見たのは、3人の男の子がこのみをいじめてるところ。
あの3人は、悪ガキ小学生トリオとして有名な奴らだ。
タカ坊は…いないのね。独りで遊びにきたんだ…
雄二でもいればなんとかなるけど、私一人では…私もやられちゃう。
そのとき、この間、お姉ちゃん風を吹かせるため言った言葉が思い出された。
『今日から、あたしたち仲間だから、だれかが困ってたら、ぜったい助けること。いいわよね。』
そうよ、ここで引き下がれないわ。
この子は、私の妹、雄二の妹、そして、タカ坊の妹。
まあ、最悪、このみだけでも逃がせるか?
よしっ、いくわ、そう思った私より先に、飛び込んでいった影が見えた…タカ坊だった。
「おまえら、やめろよ。」
「なんだ、おまえ。」
「あ〜おまえ、こいつとラブラブなんだな〜」
「なまいきだ、やっちまえ。」
タカ坊は必死で善戦してるけど、なんせ多勢に無勢。
そこで、私はようやく我に返った。『あんたたち、私のタカ坊に何するの!』
「あんたたち、ひとりに3人でかかるなんて、ひきょーもののあつまり?」
「あっ、男女だ。やべえ。」
「大丈夫だ。こっちは3人だぜ。やっちまえ。」
タカ坊さえ戦力になってくれれば、こんなやつらに負けるわけは無いのよね。
一人目は、大事なところを蹴り上げて動けなくしてやった。私の蹴りは痛いでしょ。
あとの二人はタカ坊にかかっていたので、その一人の後ろから髪の毛を掴んで、引っ張って引きずり回してやった。
タカ坊はと見ると、もう一人と互角にやりあってた。やるじゃない、小学生と互角なんて…。
私は、彼らに近づいていき、啖呵を切った
「あんたたち、まだやるなら、ようしゃしないけど、どうする?」
3人は、わーっと逃げて行った。
私は、タカ坊のほうに向き直ると、彼の格好に思わず吹き出してしまった。泥だらけで、すごかったんだもん。
「タカ坊、泥だらけだよ。でも、やるね、みなおしたよ。」
タカ坊は、かっこよく微笑んだ。
「タマ姉もすごいね。ぼく、知り合いになれて、とってもうれしいよ。」
タカ坊…なんだか、胸がきゅんとした。
そのとき、隅のほうで隠れていたこのみが、私のところまで走ってきて、とびついてきた。
「タ、タマおねえちゃん。ありがとう、このみ、こわかった、こわかった…ぐす…こわが…。」
かわいいわね、このみ。
タマお姉ちゃん…か、妹っていいもんだな。この子は私の特別になるかも知れない。
「このみ、だいじょうぶ。いつだって、あたしとタカ坊がついてるから。ね、タカ坊。」
「うん、このみ、タマ姉とぼくは、いつもこのみのそばにいるよ。」
「タマおねえちゃん、すわって。」
このみが、座ってくれとのリクエスト。なんだろう?私は、彼女の顔の高さまでしゃがんだ。
『これでいい?』と言い終わるのを待てないように、このみは、私のほっぺにキスしてきた。
私は、こんなことされたの初めてだったから、びっくり。かーっとなって、頬が火照るのを感じた。ひょっとして、顔、赤いんじゃないかな…。
「タマおねえちゃん。ありがとう。このみ、タマおねえちゃん、だいすき。タカくんも。」
えっ?と思ってると、タカ坊はこのみの顔の前に、しゃがみこんで、ほっぺにチュってしてもらってた。この二人、いっつもこんなことしてんだ…。じゃ、じゃあ…。
「タカ坊、よくやったよ。」
そういって、タカ坊のほっぺにチュっと。
「ありがと、タマ姉。これからも、なかよくしようね。」
タカ坊から、ほっぺにチュっと。
今から思えば、私たちのファーストキス。唇への直接的なキスじゃなかったけれど…それでも…あのときの、私にとっては、ファーストキス。
でもね、タカ坊は、そんなことは、全然気にもかけない。
そのことに気がついたのは、ずっと後になってから…。
タカ坊は、女心に全然反応しない。
私、どうしてこんな人を好きになっちゃったんだろうと後悔したこともあったけど、あとの祭り。
このときに、すでに恋に落ちていたんですもの…大好きよタカ坊。
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いかがでしたでしょうか?幼いタマ姉のほのぼのとした、女の子の部分が出せたらと思って書きました。
タカ坊とこのみは、ゲームを見ると、どうみても、新興住宅地の家だったもので、そういう設定です。地の人であるタマ姉たちに溶け込んでいく…というか、タマ姉が気がつかないうちに、恋に落ちていくというストーリーにしました。
この頃、愛佳や郁乃はどこにいたんでしょうか?愛佳がヤクドって言うところを見ると彼女たちは、小学校ぐらいで転向してきたということなんでしょうね。たぶん、郁乃の病気の治療のために…。とすると、この頃にはいなかったということになりますね。あと、可能性のあるのは、花梨と優季ぐらいでしょうか?タマ姉が九条院にいってるあいだの話も書いてみたいものです。
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