七夕

今日は、7月6日。
明日は、七夕さま…で、私の誕生日でもある。 
 
昔みたいに、嬉しくはなくなってきたけけれど、
祝って欲しい人には、いくつになっても、「おめでとう」と言って欲しい。
 
去年は、完璧に忘れられて、次の日になって大慌てでプレゼント持ってきたんだっけな…
しばらく、口をきいてやんなかったような気がする。
 
今年も、ひょっとすると忘れられてしまうかも…だって、最近、タカ坊ったら忙しそうだしね。
まあ、まだまだ、研究所では新人だし忙しいのは分かるんだけど、忘れて良い事と悪いことがあるんだから。
 
いっそ、こっちから、食事にでも誘っちゃおうかしら?
そうね、それがいいわね、電話してみようか?
 
タカ坊の家に電話をしようと立ち上がったときだった。
電話のベルの音が聞こえた。
ん? タカ坊だったりして?
電話の音が聞こえなくなってすぐに雄二がドアをノックした。
 
「姉貴、貴明から電話だぜ」
 
わたしは、雄二にお礼を言うと、いそいそと電話のところまで行き、受話器をとった。
 
「もしもし、お電話かわりました」
 
「あ、タマ姉、こんばんは。元気だった?」
 
「ふ〜ん。まあまあね。そっちは?」
 
「まあまあ、忙しいけどね…」
 
やっぱり、忙しいんだね。
 
「タマ姉、明日なんだけど、夕方から時間取れる?」
 
え? ひょっとして、覚えててくれたのかな? 
もう、タカ坊のお誘いなら、他のどんな約束もすっぽかして行っちゃう…
 
 
けど、その気は無いふりはしておこう。
乙女のたしなみ。
 
「ん? うん、特には無いけど」
 
「よかった、実はね、明日、研究所のみんなで七夕パーティーやろうってことになって、
 皆さん家族同伴なんで、僕はタマ姉を同伴していこうかと思ってるんだけど、来れる?」
 
な、なに? 七夕パーティーですって? 
 
 
な〜んだ…覚えてくれてたんじゃないのか…
 
でも、まあ、断る理由もないし、
タカ坊と一緒にいられることには違いないんだし…
まあ、いいか…去年よりはましだわね。
 
「ん? 別にいいけど。何時から?」
 
「夕方6:45集合だから、6:30に研究所近くの駅前。いつものところでどう?」
 
「OK、どんな服着ていったら良いの? パーティードレス?」
 
「いや、ははは、そこまでしなくってもいいって…まあ、ちょっとおでかけ風でいいんじゃないの?」
 
「OK、じゃあ、明日ね」
 
「うん、じゃあお休みなさい。愛してるよ、タマ姉」
 
「わたしもね…家じゃ、返事できないじゃない…わざと言ってるでしょ。おやすみ、タカ坊」
 
「ははは、うん、おやすみ」
 
私は、電話を切って自分の部屋へ戻った。
 
さてと、どうしようかな?
まずは、服を選ばなきゃね。
ドレスはだめってタカ坊が言ってたわね。
 
スーツ? ちょっと固いかしら?
七夕なんだから、浴衣なんていうのはどうかしら? 
あ、でもタカ坊がスーツよね…合わないわね。
 
これが、いいか、薄紫色のタイトスカートとジャケット。
うんうん、これなら、タカ坊ともあわせられるし…
 
明日、何て言って紹介してくれるんだろう?
婚約者? 彼女?  
 
万が一、『幼馴染』って言ったら張り倒してやるんだから。
 
あ、そうだ、靴も選ばなきゃ…
あ〜、そうなんだったら、ヘアーカットにも行っておいたのに…
女の子には、いろいろと準備があるんだから、前の日に誘うなんて、ホント何も考えてないんだから…ばか。
 
 
次の日、予定通りの時間に、約束の場所に着くと、もうタカ坊は来ていた。
まあ、彼の事だから、早めに来るだろうとは思ってたけどね。
私は、後ろから、そ〜っと気づかれないように近づくと、タカ坊を後ろから抱きしめた。
 
「タ〜カ坊」
 
う〜ん、いい抱き心地〜
 
「あ、タマ姉。びっくりした〜」
 
「待った?」
 
「ううん、今、来たところ。ところで、そろそろ離してくれない? ちょっと恥ずかしいよ」
 
「そう? 私はぜんぜん恥ずかしくないんだけど」
 
「いや、人が見てるし」
 
そう? じゃあ、離れてあげますしょうか。
タカ坊から離れて、彼の前に回った。
 
 
タカ坊ったら…もうっ!
 
「さ、行きましょ」
 
私は、タカ坊の腕をしっかと抱き寄せると、そう言ってタカ坊を促した。
 
「タマ姉、ちょっと…」
 
「あれ〜? 恋人でしょ? 
どうしてだめなの? 
エスコートしてくれないの? 
ね〜えぇ〜 私も甘えたいぃ〜」
 
「わかったよ、わかったから、駄々こねるのやめてよ」
 
「う〜…一生懸命、きれいにしてきたのに、何も言わないからよ」
 
「あ……」
 
タカ坊は、観念したのか、そのまま歩き始め大きなホテルの中に入っていった。
 
「タカ坊? こんなところでパーティーやるの?」
 
「うん、一番上ね」
 
「ふ〜ん」
 
研究所ってお金あるんだな…ここの一番上のレストラン高いよ…
彼は、私を連れてレストランに入ると、「予約していた河野です」って。
ん? なんかおかしい。
 
「タカ坊? あの…七夕のパーティー…だよね…研究所の…」
 
「ははは、実は、それは嘘。
 今日はタマ姉の誕生日のパーティー…二人だけのね」
 
「え? タ、タカ坊…」
 
そして、案内された席は、窓際の席。
夕日がきれい。
今日は天気予報では、夜から曇りみたいなこと言ってたけど、夕方だけ晴れてくれたのね。
 
「で、この窓から見える夕日がタマ姉へのプレゼント」
 
「ば、ばか…なにキザなこと言ってるのよ。
に…似合わないわよ…で、でも、ありがと…
今年は、忘れられてるのかと思ってたから…」
 
もう、似合わないことしちゃって…
そんなことなら、もっとおめかしして来るんだった。
 
「でも、じゃあ、どうして初めからそう言わなかったの?」
 
「もし、そう言ったら来た? 
多分、『そんなところで、わざわざしなくても良い』って言ってたんじゃない?」
 
あ、そうか、そうかもしれない。
そういえば、学生時代にもそんなこと言われて断ったような気がする。
 
「ありがと…」
 
「まあ、一年に一回のことだし、たまには良いんじゃない? 
…っていうことで、とりあえず楽しもうよ」
 
ありがとね、タカ坊。よ〜し、そういうことなら、楽しんじゃうぞ。
 
料理はタカ坊があらかじめ頼んでおいてくれたみたいで、どれもおいしかった。
ちょっぴりワインも飲んで…食後のコーヒーも…
 
外は、さっきまでの夕暮れの風情とはすっかり変わり、夜景がとってもきれい。
ワインのほろ酔い加減も手伝って、とっても素敵。
夜景とタカ坊に見とれてたら、タカ坊がごそごそと何か探し出した。
 
「タマ姉、これ、誕生日プレゼント、このみから預かってきたんだ。
実は、このみも誘ったんだけど、お邪魔したら悪いからって…
ゴールデンウィークに遊びに行ったときのお土産だって言ってたよ」
 
「このみ…から…このみったら、気を使っちゃって…」
 
「それから、これは、僕から」
 
と言って、小さなジュエリーケースを開けて、こちらに差し出した。
中には、リングが…
 
「タカ坊…」
 
「タマ姉、いつだったかの誕生日に、タマ姉に約束したよね、
 『まだ、学生だし、本当に結婚するのはまだ先にしたい。
  その時には、ちゃんとした指輪を贈るから、それまでは…』
 って、覚えてる?」
 
「あ、当たり前じゃない。昨日のことのように覚えているわ」
 
「だから、その約束を果たそうかと思って」
 
そう言うと、私をまっすぐに見て、こう言ってくれた。
 
「タマ姉、ううん、向坂環さん、僕と結婚してください。
まだ、あんまり稼ぎがないから…生活はちょっと苦しいかもしれないけど…幸せにするから」
 
私は、その言葉を、一言一言かみしめるように聞いて、ゆっくりと返事をした。
 
「タカ坊、ありがと…本当にうれしい。
答えはもちろんYESよ。
でも、タマお姉ちゃんを幸せにするのは大変だぞ〜
だから、二人で、素敵な家庭を築きましょ? ね」
 
「え? で、でも…やっぱり、男としては…」
 
うふふ、可愛い。
 
「ナマ言っちゃって。タマお姉ちゃんにそういうこと言うのは10年早い!」
 
「タ、タマ姉…」
 
「うふふ、う・そ…ありがと、いっぱい甘えさせてもらうわ…長い間待ったんだもの…あ、あ・な・た」
 
本当に長かった、一時は、もうタカ坊は私の元には帰ってこないかもとも思ったもの。
 
「さあて、そうと決まれば、次行こっか、次!」
 
「え? 次って?」
 
「だ・か・ら、飲みに行きましょう。祝杯。
 今日は帰さないわよ〜さあ、ついてらっしゃい」
 
「タマ姉〜本気〜?」
 
あたりまえじゃない、今日という日を一生忘れないものにするんだから…覚悟なさい。
 
これだけ待たせたんだから…

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あまり、いらないあとがきはいらないですね。

こんな時、タマ姉って泣くかな? とも思ったんですが、多分、タマ姉は、意地でも泣かないような気がします。

こんな時には…決して…

サプライズパーティーでしたが、ひょっとすると、タマ姉も薄々気づいてたのかもしれません。なんたって、タマ姉ですから…
 
 
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