とりあえず、姉貴に詫びいれて機嫌直してもらってくれよ。こっちはたまらんぜ。」
「わ・わかった。とりあえず、今日、デートに誘ってみる。」
「OK。じゃあ、俺は家に帰ってるから、頼んだぜ。」
と言うと雄二は一目散に家に帰っていった。
どうやら、タマ姉の目を盗んできてくれたようだ。
持つべきものは友達だな…と痛感した。が、今はそれどころではない。
タマ姉のご機嫌をとる?至難の業だなあ…でもやらないと…
明日からの報復のほうが怖いし…。とりあえず、電話してデートに誘ってみよう。
…トゥルルル、トゥルルル…ガチャ
「はい。向坂でございます。」
タ・タマ姉だ…
「タマ姉?たかあきです。」
「…どちらのたかあき様でしょうか?」
「あ…の、こうのたかあきです。」
「申し訳ございませんが、そのような方を存じ上げませんが…」
「タマ姉、ごめんなさい。タマ姉の誕生日を忘れていて…」
「ご用件が無いようでしたら、電話をお切り願えますでしょうか?」
「タマ姉…ごめんなさい。タ・タマ」プチッ…ツー
切られてしまった。こりゃ、相当怒ってるよ。
どうしよう…こうなったら、あたって砕けろ…って、本当に砕かれるかもしれないな…
でも、とりあえず、家まで行ってみよう。あっ、そうだ。
こういう時こそ、手紙かな?行く前にちゃんと書いてからいこう…会ってもらえないかもしれないし…。
さ・さぁ…呼び鈴を押すぞ…って、何回もためらった後にようやく、意を決して…
ピンポ〜ン。
『はい、どちら様でしょうか?』
タ・タマ姉だ…
「タマ姉?たかあきです。」
『…』プチッ
「タ・タマ姉…」
ど・どうしよう…って、悪いのは僕だもんな…。
まあ、一応想定内だから、予定通り、手紙を郵便受けに入れて…
あとは、神のみぞ知る…か。
手紙には、昨日忘れたことのお詫びと駅前で待ってることを
書いたんだけど来てくれるかな?無理だろうな…。
来てくれないかもしれないけど…とりあえず、今から駅前で待っていよう。
…あれから、何時間たったんだろう?もう、夜も更けてきたな。
時計台は夜の十時になってる。
お腹空いたなぁ、さすがに立ってられなくなって、駅前の階段に座り込んでいた。
今日はもう来てくれないかな…って、元々来てくれるほうがおかしいんだよな…。
まあ、いいや。あと2時間で『今日』じゃなくなるから、それまでは待っていよう…。
ん?…あっ、居眠りしてた。何時だろう?あれっ?何これ?あ、ジャケットだ。
誰かが着せてくれたんだろうか?と思って後ろを振り返ると、タ・タマ姉…?
「タ・マ・姉」
「…」
「これ、タマ姉が着せてくれたの?」
「…」
「タマ姉ごめんなさい。本当にごめんなさい。いつも迷惑かけてるのに、タマ姉の誕生日忘れちゃってごめんなさい。」
「あ…あやまったって、ゆ…許してあげない。」
『ふんっ』と向こうを向いたまま
「うん。分かってる。僕が悪いんだから、許してもらおうとは思ってないよ。
ただ、きちんと謝りたかっただけ。そう簡単には許してもらえないと思ってるし、
ひょっとしたら、ずーっと許してもらえないかもしれないけれど…
許してもらえるまで…努力する…今日は、本当にごめんなさい。
それと、駅まで来てくれてありがとう。」
素直に謝って、頭を上げたら、タマ姉がこっちを向いてた。
相変わらず、怒ったまんまだったけれど…
「あ…あなたね。ちょっとは人の気持ちも考えなさいよ!
私が怒ってるからって…こんなところで一日中待ってて…
もし、私がこなかったらどうするつもりだったのよっ!」
「えっ…、ほんとは、タマ姉の家の前で待ちたかったんだけど…タマ姉に迷惑かかると思って…」
「どこで待っても迷惑なの!」
「ごめんなさい」
「おまけに、こんなところで居眠りして、風邪でも引いたらどうするの!
も〜う。あぁ。いらいらする!ちょっと!こっち来なさい!」
えっ?と思っていると、タマ姉に、腕を引っ張られて気がついたら、タマ姉に抱きしめられていた。
「こんなところに夜遅くまでいて、事件に巻き込まれたら…
疲れて倒れたら…風邪でもひいたら…本当に、バカなんだから…
お姉ちゃんを心配させないで…誕生日は祝って欲しかったけど…
別にタカ坊が来なくても関係ないじゃないの!
私が勝手に怒ってただけなのに、どうして…そんなに謝るのよ…」
「タ…マ…姉」
「タカ坊は、私の恋人でもなんでもないんだから、私は怒る権利はないのよ…。
このみだって、昨日は来なかったんだから…
このみと同じだって思えば良いのに…それが、できなくて怒ってただけなのに…」
「タマ姉、違うよ。待ってる間に分かったんだ。
タマ姉が怒ったのは僕の事を大事に思ってくれてるから。
そして、僕はそのことを知っていたはずなのに、タマ姉に悲しい思いをさせちゃった。
最低だね…。だから、僕も謝りたかったんだ。僕の大事な人に悲しい思いをさせちゃったから…」
「え?…だ・い・じ・な・人…?」
「恋人でもなんでもないから、怒る権利はないなんて言わないで…
怒る権利は…あるよ。少なくとも僕はそう思ってる。」
「そ…それって…」
タマ姉は、目をまん丸にして呟いていた。
そして、耳まで真っ赤になりながら、下を向いてしまった。
僕も、これ以上はないぐらい恥ずかしくて、たぶん真っ赤になってたと思う…
「こ、こんなときに言うなんて…って思うけど…タマ姉は、小さいときから
僕の大事な人なんだよ。だから…だから、誕生日を忘れた自分を、
タマ姉に悲しい思いをさせた自分を許せなくって…ごめんなさい。」
「タカ坊…ありがと。一日遅れの…もうじき二日遅れのプレゼントになるけど、
とっても嬉しいプレゼントをありがとう。私も貴方のことが大好きよ。他の誰よりも。」
「タマ姉。」
「…で・も…、ということは…私、怒ってもい・い・の・ね。」
いつもの強烈な流し目でこちらを見ながら、恐ろしいことを呟かれました。ま・まさか…
「え?!タ・タマ姉!」
「冗談よぉ。明日からしばらくは、私のそばにいなさい。
それが誕生日を忘れた罰です。い・い・わ・ね。」
良いも…悪いも…。
「じゃあ帰るわよ。」
満面の笑みで僕を引っ張っていくタマ姉を見ながら、
まあ、いいか、このほうがタマ姉らしいしと思うけど…ちょっと早まったかな…。
「何か言った?」
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